こんにちは、みなさん。日本だと「読書の秋」ですが、私のいるカナダだと「サマー・リーディング」というくらいなので、みなさん夏の休暇に読書するみたいです。
AIあらすじアプリを試してみた!
英語圏で次々と刊行されるノンフィクションをバサバサと読み倒したい! そこで、あるあらすじアプリを試しました。
「主人公は誰ですか、その人に何が起きるのですか?」
……と質問を順序よく投げると、主人公の名前と、主人公に何が起きるのか大体教えてくれます。本を読まずして概要が掴める仕組みです。
ところが、実際にこのアプリを使おうとすると、キンドルのアカウントとつなげなければなりません。キンドルとしかつなげられないのです。私は英語の電子書籍は別のところ(KOBO)で購入しているので、KOBOに
このあらすじアプリと契約する予定があるのか?
KOBOが使えるあらすじアプリはあるのか?
……と問い合わせました。答えはどちらもNO。そこで私は考えました。まず、これではキンドルが完全一人勝ちするのでは?と思ったのです。ですが、もう一歩踏み込んで考えてみると、なぜキンドルのアカウントとしかつなげられないのかがわかった気がしました。ここからは、調べ上げたわけではなく、私の想像で書きますので、ご了承を!
AIあらすじは、おそらく、アマゾンのカスタマレビューとGoodreadsのレビューやコメントを学習データにしているのではないでしょうか。書籍そのものも学習データになっているのかもしれません。Goodreadsはみなさん読書録に使っていますし、作品について議論もしています。これを学習しているAIなら、わりと正確で気の利いたあらすじを提示できるはずです。
問題は、人気作品であればあるほど、レビューや感想を投稿する人が多いので、AIのあらすじもより正確になりますが、そうでない作品は???なあらすじを提示するのではないでしょうか。
でも、いちばん怖いのは、AIが「平均化したあらすじっぽいもの」を作り出し、それを知っただけで満足する人が増えることかもしれません。「おじいさんとおばあさんのところへ男の子が生まれ、桃太郎がお供を連れて鬼退治に行く」みたいな、情報を時系列に並べただけのあらすじ……
書評の書き方を勉強している我々は、あらすじの取捨選択、評者の読解で「ああ、この本読んでみたい」と思わせる文章を書こうとしますよね。
「桃太郎は若夫婦のところではなく、老夫婦のところへとやってくる。なぜ老夫婦なのか。そこに注目して読み直してみると、子どもの頃には見えなかった、また別の物語が見えてくるだろう」
……とはAIは書かない。そのうち書くようになるかもしれませんが、今の生成AIだと、上記のような読みをする読者がGoodreadsを埋め尽くすように投稿しないと難しいでしょう。
このアプリが流行るかどうかはわかりません。今のところは、実際に本を読んだ人に「どういう話だった?」と聞いたほうが手っ取り早そうです。
今週の書評
日本翻訳連盟(JTF)のウェブサイトでの連載「私の一冊」のバトンが、ここ1年以上、書評講座のメンバーの間で回っていました。9月は眞鍋恵子さんが『誤訳をしないための翻訳英和辞典+22のテクニック』改訂増補版を紹介していらっしゃいました。みなさんが紹介している本がどれも面白く、積読が進みます。
それではみなさん、今週も元気にお過ごしください。