11月16日、第8回「翻訳者のための書評講座」を終えました。久々に参加してくださった人もいてうれしかったです。
今回の課題書は、読み解くのに時間のかかる作品と、あらすじを掴みやすいエンタメ作品の2冊でした。どちらに関しても、講師から少々厳しい言葉を頂戴し、神妙な面持ちになった瞬間がありました。書き手としての信用を失いかねないミスや凡庸さの指摘です。この講座では、全員が提出された書評を採点するのですが、豊﨑さんは「商業誌に載せられるかどうか」を評価軸にしています。
私の場合ですが、自分の力不足や凡庸さは、ゲラの赤にいつも現れます。編集者の指摘を見てから、「そうなんだよね、こんな書き方じゃ通用しない」と反省するんです。同時に、「もっと時間があればうまく書けたはず」などと言い訳も無限に頭をかけめぐるのですが、やはり、限られた時間内と字数で、人より抜きん出た文章が書けるようになるには、どこかで「厳しい言葉」に直面しないといけないと思いました。
今回、私は読んでも完全には理解できなかった、わからないところの多い小説をあえて書評してみました。その出来のほどは別にして、講座のなかで、この手の本を書評できるまでに理解を高めるのにはどうしたらいいのかと質問したら、豊﨑さんはメモの取り方を懇切丁寧に教えてくださいました。でも、メモの取り方は個人個人で違うので、もっと本を読むしかない、という結論で、「この冬は読むぞ」と決意を新たにしました。
他には、「アフリカ系アメリカ人」「黒人」「白人」といった出自に関する表記や、ポリコレが絡んだ表記についても、勉強になる話し合いがありました。
書評王に輝いたのは上原尚子さんの『缶詰サーディンの謎』の書評です。独創性のある語り口と文体で書かれていて、なぜそれを選んだのかは、スペースの感想会でお話しされています。
講座のあとは和気藹々で、「和臭漂う翻訳語」についての雑談を楽しみました。「かまぼこ型兵舎」や、「すし詰め」、「鼻ちょうちん」とか。「かまぼこ兵舎」は辞書に載っていました。和語の扱いはちょっと面白いですよね。ちなみに、わたしは「かまぼこ型兵舎」を訳文につかったことがある!
あとは同人誌作成の経過報告やら、今後の予定などについても話しました。同人誌に関心があるけれど、一人では無理だと思っている人がいたら、ぜひ、この講座に参加してみてください。次回は、2月くらいになると思います。
Bookpotters による今週の書評
眞鍋惠子さんの書評を2本ご紹介!
2024年10月1日2発行の図書新聞3658号、『猛獣ども』(井上荒野著、春陽堂書店)
https://note.com/yasushi_kaneko/n/n1d20b982a20c
2024年11月9日発行の図書新聞3662号、『パリ十区サン=モール通り二〇九番地 ある集合住宅の自伝』(リュト・ジルベルマン著、塩塚秀一郎訳、作品社)
https://note.com/yasushi_kaneko/n/nb3ee320e365a
Bookpotters が関わった翻訳書
Bookpotters が関わった訳書も紹介していきます。なんで今までこの紹介を思いつかなかったかなぁ〜、反省。
待場京子さんがこちらで翻訳協力! 量子コンピュータが変える未来についての1冊で、クリスマス発売です。
『量子超越: 量子コンピュータが世界を変える』(ミチオ・カク著、斉藤隆央訳、NHK出版)
そして、安達妙香さんは、こちらで翻訳チェックと章題の書き文字を担当! 11月19日発売です。主人公たちと一緒に自分の心の深いところに降りていくような感覚になる話なのだそうです。Bookpottersの何人かは(わたくし新田も含め)、原田勝さんの勉強会のメンバーなので、二重にうれしいお知らせです。
『ぼくの中にある光』(カチャ・ベーレン著、原田勝訳、岩波書店)
それでは、また次号でお会いしましょう。