五回目翻訳者のための書評講座
書評講座を12月2日に開催しました。5回目ともなると、いろいろと挑戦したくなるもの。「お勧めの3冊」と、別人になりきって書評を書く「なりきり書評」も登場し、批評するのも、より一層面白かったです。「合評のとき、何するの?」とよく聞かれますが、批評の目を養っているって感じでしょうか。
たとえば、読んでいない本の書評をどう評価するか。そもそも、現実には、「読んでいない本の書評を評価する」なんてことはしないのですが、この講座ではやっています。自由課題が選択肢として与えられているし、課題書とて書評を書いた人以外は読んでいない場合もあるからです。
この「書評を評する人」は一般読者ではなく、「書評家」の体で評する感じなので、読んでいないものに対して断言できないことがあるわけです。評し方が、判断を留保しつつ、指摘すべきところは指摘するという作業になるんですね。これが不毛な議論をしないことへの大切な要素のような気がします。でも、意外とこれが難しい。つい、断言してしまうんですよ。
今回私は「お勧めの3冊」をやってみたのですが、3作品を選んで繋げる作業がDJみたいだと感じました。次回も何かまた「形式」を変えて挑戦してみたいと思います。
今回の課題は、『ものまね鳥を殺すのは:アラバマ物語』(ハーパー・リー著、上岡伸雄訳、早川書房)、『神は俺たちの隣に』(ウィル・カーヴァー著、佐々木紀子訳、扶桑社ミステリー文庫)、自由課題だったのですが、話題書の『ピュウ』を選ぶ人も多かった回でした。書評王は生方眞美さんで、アントニオ・タブッキ著『島とクジラと女をめぐる断片』の美しく端正な書評でした。パチパチパチパチ!
他でも書評講座を教えてらっしゃる豊﨑さんからは、この講座はダントツ「うるさい」とお褒めの言葉をいただきました。意見交換が活発であるがゆえなのですが、今回も3時間超え。回数を増やせば、もう少しコンパクトな講座になるのかなと反省中です。
講座のあとの懇親会も、同人誌についてのアイデアがいろいろとテーブルの上に投げ出され、楽しかったです。何かをつくるということにみんな真剣で、関心が高いんです。京都文学フリマの参加表明は、私の2023年の出来事の中でも、かなりの一大事で、1月が楽しみです。
もちろん6回目もやります! 同人誌の作成も含めて興味のある方は是非参加してください。ちょっと覗いてみたいだけ、という方は合評からの参加をお勧めします。
京都文学フリマは1月14日!
表紙デザインもほぼ決まり、最終案を投票で決めたのですが、どれもすばらしくて、決め難かった。お披露目は来年の京都文学フリマです。私もブースにおりますので、是非、お近くの方は遊びに来てください。
今週の気になる書評!
Bookpottersのお一人、檀原美奈さんが書いた、キャサリーン・レイシー著『ピュウ』(井上里訳、岩波書店)の書評が、図書新聞の12月2日号に掲載されています。note でも読めます。『ピュウ』ってすごい小説ですよねぇ。まだ読んでいらっしゃらない方は、檀原さんの書評を読んでから、小説を読んでください。
そしてもう1つは、Bookpot編集部の部長、かとうちあきさんがJFTジャーナルの連載コラム「私の一冊」に『タイコたたきの夢』を紹介する記事を寄せています。言葉のリズムって、考えるのが面白いですよね。